シリシリウリウリー24:白上げて、上げません

和家若造

2010年09月30日 16:24

白上げて、上げません

 早いものでコラムを書いて丸2年。我ながらよく続いている。まだまだネタが尽きないのはさすが沖縄である。

 沖縄のバスはバス停で待っているだけでは停まらない。乗車希望者は積極的に手を上げて乗ることをアピールする。一年程前、那覇市内を運転中に目にした光景。バス停で一人、半身車道に身体を乗り出して立つ年配の女性が、トラックが近づき危ないなと思った瞬間サッと手を上げた。交通量の激しい道路でひとつ間違えば車にはねられかねない不自然な姿。実は彼女は目が不自由で耳をそばだててバスが来る音をジッと聞いていた。乗用車と大型車の音の聞き分けはできるが、バスとトラックの音を聞き分けることはなかなか難しいようだ。それらしき音が近づくと手を上げていたのであった。なんとも表現しようの無いショックを受けた。慣れない観光客はもちろん、うちなーんちゅでも目の前をバスが通り過ぎてしまった経験をもつ人は多い。複数の路線の重なるところでは行き先や系統番号をすばやく見極める能力も必要である。

 手を上げないとバスが停まらない理由は、ただでさえ渋滞で遅れがちなので時間短縮のためかもしれないし、バス停でない所でも手を上げると停まっていた頃の名残りかもしれない。まさか運転手の採用基準がせっかちで面倒くさがり屋というはないだろうとバス会社に問い合わせてみた。なんと現在は手を上げなくてもバス停に立っているだけでバスは必ず停車し、行き先のアナウンスをして行くとのこと。乗る人は習慣か、念のためか、みんな手を上げているが、実際バス停には「手を上げなくても停まります」という表示がしてあった。ただ身を乗り出して耳をそばだてていた女性は、今は安全にバスに乗れている…はずである。

 若造マスター経営のカピBarが終わり、松山から歩いて家路へ向かう帰り道はめちゃくちゃタクシーが多い。すれ違う車も追い越していく車も必ず減速し、クラクションをならしていく。その度に驚かされドキッとし振り向き、運転手と目が合うと待ってましたというようにタクシーは停車する。沖縄の明け方のタクシーは手を上げなくても停まります。

※沖縄JOHO 2002年3月号掲載 



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