シリシリウリウリー23:あぶらがのってる年頃
あぶらがのってる年頃
お昼時になると突然お弁当屋さんがでてくる。ワンボックスカーの後ろのドアをあけての陳列やパラソルとイスに発砲スチロールの白い箱だけだったりの急造店舗。この無店舗販売の人たちがオフィス街や建築現場などの沿道に沢山並ぶ。
沖縄の沿道でお弁当を販売することには警察の許可は要らない。他県では条例で「行商」の許可をとらなくてはならないところもある。しかし作ることには全国基準の食品衛生法の規制がある。知事の承認が必要でお弁当には製造者・製造日・賞味期限等の記載が義務づけられる。この記載はもちろん消費者保護と製造者責任でもあるが、裏を返すと一定期間が過ぎたものに対して責任はとらなくてよいという製造者保護と自分で見極めよという消費者責任である。その表示がないお弁当は俗に言う「モグリ」。この数がけっこう多いのは沖縄なあなあ文化の象徴かもしれない。蛇足ではあるが、先日食べたお菓子には「悪くならないうちにお食べ下さい」という究極の賞味期限があった。
そのお弁当は全体的に安価でボリューム満点あるが、揚げ物、炒め物が多く油っぽい。その代表がご飯の上にサンマが一尾どどんとのっているサンマ弁当。そのサンマのほとんどが塩焼きせずに油で素揚げしてある。大量に作る場合、焼くよりも揚げた方が効率よい。全国のホカ弁と称する作りたてお弁当屋さんでもシャケ弁の鮭はその場で焼かずにあらかじめ火を通したものを湯せん等して時間短縮することが多いが、沖縄のホカ弁のシャケ弁はその場で揚げている。また熱が通り易く殺菌効果が高く、保存がきく揚げ物は「もぐり」の弁当屋さんのプライドをかけた製造責任かもしれない。
焼き魚の習慣は沖縄の家庭でも少ない。南の島の魚たちは淡白な味で塩焼きしただけでは物足りなく、揚げ物やバター焼き、煮付けが多い。その文化が長年かけて根付いているので材料が変わっても料理法は変わらずに塩焼き習慣が少ないのであろう。
でもサンマを油で揚げるとしつこくなる。揚げるなら脂ののってないものの方がいいはずだが「このサンマ脂がのっていません」という宣伝のうたい文句はまだ見たことがない。
※沖縄JOHO 2002年2月号掲載
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