シリシリウリウリー02:カニステル、何捨てる

和家若造

2010年09月30日 16:02

カニステル、何捨てる 

 先日開南から公設市場に向かう通りで見慣れぬ果物を発見。薄オレンジ色で私の食指を動かす彼女の名前は「カニステル」。いろいろ想像できそうな発音と甘そうな優しいスタイルに負け4個購入。冷蔵庫で冷やして、とりあえず一つ試食。ちょっと硬めなのが気になったが一口ガブリ。ほとんど味がないのだが、更にそこからが予期せぬ出来事。なんと上唇と下唇がくっついて口が開かない。糊の原料かと思わせる粘着力。後で聞くと柔らかくなってから食べるとのこと・・・。冷蔵庫から出してのんびり熟すのを待つことにする。  

 友人宅でカクテルブックをパラパラ見ていると沖縄人がデージ喜びそうな名前のショートドリンクを発見。ジンベースでレモンジュースとグレナデンシロップで作るそのカクテルは「ジンデージ」。よく読むとデージとは雛菊(daisy)のことらしいが、ここ沖縄では“ginが大変!”という意味になる。このネタは受けそうだとひとりニンマリ。翌日、馴染みのバーで「ジンデージ」を早速注文。しかしカクテルは出てこずマスターお得意のトークの嵐。「ginがたっぷりのカクテル」という笑い話をしようとしたが、私の発音は「お金(銭)がいっぱい」という沖縄方言に聞こえるとのこと。これはこれでおめでたい。

 別の日。仲田幸子芸能館でのカラオケタイム。お気に入りのマドンナまーちゃんの歌う沖縄民謡のモニターの歌詞の中に「金」の文字を発見。ふりがなは「かに」。看板孫娘はなかなか振り向いてくれないのだが、その日の感激PL戦に興奮モードのツルネーさんとYKKの二人によるとお金は「ジン」の他に「カニ」というウチナーグチもあるとのこと。

 家に帰ってそろそろ食べ頃だろうと件のフルーツと御対面。しかしながら時既に遅し、そこには明らかに時期を通り過ぎた「おばー」じゃなくて「カニステル」。結局一つもまともに食べられないという現実。蟹も捨てちゃうなんて笑っていた私の方が「金捨てる」。…おいおい駄洒落かよ。

※沖縄JOHO 1999年5月号掲載 



全24作品⇒若造沖縄新鮮体験コラム「シリシリウリウリー」インデックス



若造作品保存館⇒若造アーカイブズ

関連記事